ことばのちから

世界は言葉でできている。

忘れていくことも含めて生きること

忘れていくことも含めて生きることなんだろうな、という気はしています。人は罪悪感を持ちながらも、どこかで折り合いをつけながらやっていると思うんですよ。その一方で、ほんとは折り合いをつけられるものじゃないというのが、無意識の中にあるんだと思うんですね。だから、折り合いをつけることで、よけいに罪悪感が出てしまう。
たとえばなんですが、よくセピア色の写真といいますよね。そこには時の流れがあり、時とともに薄れていく思い出があります。今、デジタルの時代になりましたが、亡くした人を写真で覚えておくときに、一切劣化しないデジタルデータだったなら、ちょっと厳しいかもしれない。何年経っても、昨日までずっといたような存在として背負わなきゃいけないというのはね。
僕にとっての時の流れというのは、やさしいものです。時の流れが癒してくれるものや、解決してくれるものを信じているんです。でも、そのやさしさというのは、あくまでも生きている人間にとってのやさしさであって、亡くなった人にとってはわからない。その都合のよさを使いながら生きている。


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