ことばのちから

世界は言葉でできている。

まずは自分の「現場」を磨け

「現場」という言葉は魔物だ。
英語で直訳できる言葉はない。
ある種の製造業において「現場」とはあくまでも「製造現場」を指す。
他のあらゆる部門は「現場を知らない」部門だ。
「営業現場だって現場ですよね」という言葉を、
「”一般的には”そうは言いません」と一蹴されたことがある。
しかし別の会社では、営業を現場と呼び、マーケティングやバックオフィスを
「現場を知らない連中」と嘲笑している。
マーケターが、経営者のことを「現場を知らない」と批判しているのを
聞いたこともある。
経営者が「我々は日々経営の現場で戦っているのに、コンサルや銀行の連中は
言うだけでいいからラクだよな」と言っているのもよく聞く言葉だ。
かと思えば、コンサルタントが「民間の現場はそんなに甘いものじゃないですよ」と
官僚を諭したりもする。
銀行員が「大学を出て民間の現場を経験せずにそのまま教師になる制度は
おかしい」と教員を批判しているかもしれない。
「私は現場・現地・現物の三現主義です!」と経営者が強調するのは毎度おなじみのシーンだし、
対して「現場なんて来たことねえくせに」「”院長回診”が三現主義かよ」という批判もまたおなじみだ。
壮大なる現場の入れ子構造
現場のマトリョーシカ
そこには、ある種のルサンチマンとともに、自らのもつ現場への誇りと
他者への蔑みが混然一体となっている。
いったい現場はどこだ。
それはすべての人にとって目の前にあるものそのものだろう。
他の誰かを「現場を知らぬ」と批判する前に
自らの現場をピカピカに磨きあげよう。

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