ことばのちから

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ユニクロ変心 「部下は部品ではない」

 2014年8月期の連結純利益が増益から一転、減益になる見通しだと発表したばかりのファーストリテイリング。11日の株式市場では売りが膨らみ、終値は約8%下落した。こうしたなかで柳井正会長兼社長は、パート・アルバイト16000人を正社員に登用する方針について記者会見した。人材の枯渇に危機感を募らせていることを強調、これまでの経営路線の誤りを口にした。

■国内志向を評価

 「チェンジ・オア・ダイ(変われなければ、死だ)」。柳井氏はグローバル経営にアクセルを踏む中で、幾度となく厳しい言葉を口にしてきた。「ユニクロは(労働環境が劣悪な)ブラック企業」とネットなどで批判を浴びた時も、急速なグローバル化に対応できない人が増えている結果、と受け流していた。

 ファストリの新卒社員の3年以内の離職率は約30%。ピーク時に50%程度に達していた水準と比べると低下しているが、業界水準と比べるとなお高いという。

 ところが、11日の会見での物言いは一変した。「グローバル化だけではない。日常生活で成長する人生を認める」「成熟社会になると、精神的な安定を求める人が出てくる」などと話し、国内志向を積極的に評価する姿勢に変わった。「国内事業のすべてを180度変える」。これまでの経営の考え方を修正する反省会となった。

 理由は圧倒的な人手不足だ。「少子高齢化により人材が枯渇する。時給千円で人が集まる時代は終わりを告げた」と大量で安価な労働力を前提としたチェーン経営の限界を示唆した。

 離職率が高いファストリには、とりわけこの問題が響く。成長至上主義だった同社が「国内店舗総数は増やさない」とまで言い切った。

 もちろん国内は今も最大の収益源であり、持続的な成長は欠かせない。そこで1店舗当たりの売り上げを増やす方針にカジを切らざるを得ない。そのために柳井氏は、上司が一方的に部下に仕事を強要する「ダメな体育会的体質」を改善するという。

■成長鈍化を覚悟

 パート・アルバイトではなく、忠誠心の高い社員による自発的な「個店経営」に変え、生産性のアップが急務となったわけだ。「部下は部品ではない」「部下の人生を預かる」――。これまでの失敗を自分に言い聞かせる発言が相次いだ。

 ただ、パートやアルバイト従業員を正社員にすれば、福利厚生費などの人件費負担は1人当たり2~3割増える見通し。短期的には、成長に影を落とす覚悟が必要な戦略転換といえる。

ユニクロ変心 「部下は部品ではない」(真相深層) 販売員1万6000人を正社員に登用