ことばのちから

世界は言葉でできている。

大きな収穫を回収するためにはまず先に自分から譲ってみせる

外交でも内政でも、敵対する隣国や野党に日頃から「貸し」を作っておいて、「ここ一番」のときにそれを回収できる政治家が「剛腕」と呼ばれる。見通しの遠い政治家は、譲れぬ国益を守り切るためには、譲れるものは譲っておくという平時の気づかいができる。多少筋を曲げても国益が最終的に守れるなら、筋なんか曲げても構わないという腹のくくり方ができる。大きな収穫を回収するためにはまず先に自分から譲ってみせる。そういうリアリズム、計算高さ、本当の意味でのずるさが保守の智恵だったはずが、それがもう失われてしまった。
最終的に国益を守り切れるのが「強いリーダー」であり、それは「強がるリーダー」とは別のものである。

毎日新聞のインタビュー (内田樹の研究室)