ことばのちから

世界は言葉でできている。

怖さを覚える前に勝つか、怖さを克服して勝つか

 奇しくも関東を代表する強豪2校の監督から、地方大会開幕前に「怖い」という言葉を聞いた。

 ひとりはこの春、就任22年目にして初めて日本一をつかんだ浦和学院(埼玉)の森士監督だ。

「優勝する道のりは2つ。怖さを覚える前に勝つか、怖さを克服して勝つか」

 言うまでもなく森は後者だった。

 ところが埼玉大会開幕直前、実はこうもらしていた。

「初戦で負けるかもしれない。勝ってまた怖くなった」

 追われる者の恐怖。また種類の違う怖さなのかもしれない。

 一昨年秋に名将・木内幸男からバトンを引き継ぎ、常総学院(茨城)の野球部監督に就任した佐々木力はこの夏、3季連続出場がかかっていた。

「去年は怖い物知らずでイケイケでやれた。でも今年は負ける怖さがある。勝とうとする采配じゃなくて、これで負けたらしょうがないというような采配に走りそうな気がする。そこをどう乗り越えるかでしょうね」

 そんな中、怖さを熟知した森と、怖さを初めて覚えた佐々木は、いずれも県大会を突破した。


星稜の因縁、安楽の球速、名将の策。甲子園に渦巻く野球観の相克を見よ。
http://number.bunshun.jp/articles/-/614227